読むサラダ〜ある作家の挑戦〜

140字小説家✒︎『Twitter novelist』による新しい文学への挑戦記。文字を使って様々な文学への可能性を追求します。一緒に作品を作りませんか?

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2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

決まらない家族✒︎

頑張れきな子 まもなく我が家に来てから8ヶ月が経とうとしている『きな子』です。 サビ猫は猫の種類の中でもずば抜けて賢く、最近では「今日は新しい家族を探す譲渡会の日だ」ということが分かるようになったみたいなんです。 そんな日は朝から様々な場所に…

『手を繋ぐ』ブログ小説NO.27

手を繋ぐ 今日初めて彼女と手を繋いだ。 ずっと勇気が出なかった。毎日一緒にいるのにタイミングを失っていた。 放課後、珍しく彼女は何も声をかけてこなかった。ハンカチで顔を抑えながら教室からいつもと違う方向に歩く彼女が気になった。 「ごめん、俺ち…

『雨café』ブログ小説NO.26

雨café 冬の桜に夏の銀杏。 時代とともに科学は進歩し、日本から四季を奪った。一年中が快適な世界。 科学技術は雨を必要な場所にだけ降らせ、災害すらも根絶した。 現代の人々は季節の移り変わりによる衣服の変化すら知らない。テレビ番組では連日『日本の…

『音を奏でる島』ブログ小説NO.25

音を奏でる島 ここは音を奏でる島。 私たちだけの民族が暮らす島だ。 生まれた時から周りに楽器が溢れ、私たちは音楽と共に生きていく。それは呼吸することと同じくらい自然なこと。 そんなこの島の成人式は少し変わってる。 「さぁ、これらの中から一つを選…

オンラインサロン『タムココ』

天才を支える人がいる こんにちは。とうかいりんです。 西野亮廣エンタメ研究所を通じて、西野さん本人と初詣⛩に行かせてもらって作家になることを誓った1月。 今や、満願寺で個展を大成功させ、次はとんでもない場所で個展を準備する天才には、影で支える…

『ファスナー』ブログ小説NO.24

ファスナー 真夏の日差しが照り付ける灼熱の中、限られた視界でテーマパーク内を走り回っていた。 アスファルトの絨毯が蜃気楼のような煙を吐く。 朦朧とする意識の中で、子ども達の歓声に何度も救われた。 テーマパークの着ぐるみ。孤独と背中合わせに幸せ…

1時間でどれだけ書けるか✒︎

実験 こんにちは。とうかいりんです。 いざ机の前に座り、パソコンを立ち上げ一時間でどれだけの文字数を書くことができるのか。 数日にわたって実験してみたところ、ひどい時は数百文字、波に乗っている時は数千文字というように10倍以上の差が出ました。 …

『どこでもドア』ブログ小説NO.23

どこでもドア 毎日が憂鬱だった中2の冬。 学校も友達も家での生活も、なにもかも全てが嫌だった。 「なんで?」なんていう簡単な疑問文に答えられる回答すら自分の心の中に用意できていない。 とにかく殻を破りたい。その殻が何なのかは分からないけれど、…

『夜市』ブログ小説NO.22

夜市 静かな森で人魂が淡く青白い光で揺れている。怪鳥の囀りがさらに夜を深めた。 ここは夜市。 そう、絶対に立ち入ってはいけない場所だ。 何かと引き換えに、なんでも手に入れられる場所。僕はランタンを片手にここまでさまよってきた。 いつの間にか乾い…

『綱渡り』ブログ小説NO.21

綱渡り 人生はいつも綱渡り。 綱の先にあるものや渡り方なんて誰も教えてくれない。まして学校ではそんなこと教えてくれるはずもない。 だって、綱はその人によって長さも違えば、形状も違う。渡るために同じ方法が通用するわけじゃないから、教えてくれる人…

『擬態する部族』ブログ小説NO.20

擬態する部族 少女はブライト・ゴールドの塗料を小指の先にちょんと乗せると眉の上に引いた。 透き通る青空を見上げる。風が吹き、塗料を優しく乾かした。 少女はそのまま木陰でチーターへと姿を変えると、大地を駆け回った。流れる景色に少女は酔いしれた。…

『選択』ブログ小説NO.19

選択 長く平凡だった人生。 特にハイライトはなく、普通に生きて、普通にこの世を去った。 子供たちには葬式で語ることがないという辛い思いをさせたが、波乱万丈が全てだと思っていない私にとって前世はとても満足のいくものだった。 人生をやり遂げ、今久…

『100歳』ブログ小説NO.18

100歳 今日はおばあちゃんの100歳の誕生日。 ようやく二十歳になった私ですら、これまで生きてきてたくさんの出来事があった。おばあちゃんはその五倍。凄い。 戦争を経験し、出産し、田畑を頑張り、おじいちゃんを失い、きっとその人生はシワの数以上に様々…

コメントやリプライが元気をくれる✒︎

反応が何よりも喜び こんにちは。とうかいりんです。 ブログの読者数が1ヶ月と少しで300名を超え、本当に読んでくださる皆様に感謝の日々です✨ ありがとうございます 物語を書くことは永遠に続けられますが、それは結局孤独な作業。 読者の方からコメントを…

『世界の境界線』ブログ小説NO.17

世界の境界線 懐かしい匂いのする本のページをめくる。指先から紙が離れて、また新しい世界が開く。 1ページ、1ページが僕にとっての冒険。父が子供の頃に熱中した気持ちが世代を超えて僕に伝わった。 背もたれにしている樹木は父が生まれる遥か昔からこの…

『幸せの定義』ブログ小説NO.16

幸せの定義 久しぶりのおばあちゃんの家。仕事が少し落ち着く夏の終わりに私はおばあちゃんの顔を見にくる。 縁側の日差しが相変わらず気持ちいい。 近所の猫もそれを知ってか、おばあちゃんの縁側で勝手にゴロゴロと寝転がる。おばあちゃんはそれを見て微笑…

『命の値段』ブログ小説NO.15

命の値段 「本当に不幸だとしか言いようもありませんが二匹ともかなり特殊な難病です。保険の適用外なので、もしオペをするとなると数百万円はどこの動物病院でもかかるかと…」 優しそうな医師から告げられた厳しい現実。問われる命の値段。 この子たちは姉…

さっそく娘と新作を考える✒︎

落選した翌日に何をする こんにちは。とうかいりんです。 文芸社さんの『えほん大賞』に落選してしまった翌日。さっそく10月の応募に向けて娘と新作を議論しました。 次こそは本になるかもしれないと、意外にも前向きな娘。 そんな姿を見たら私が落ち込んで…

『未来からの手紙』ブログ小説NO.14

未来からの手紙 不意に届いた一通の手紙。 「あれ? 差出人は私?」 何かの間違いだろう。宛先の所に自分の住所を書くなんて私も相当疲れているみたい。大きなため息を一つ吐き、ハサミで封を切った。 「え?」 それは紛れもなく私からの手紙だった。一週間…

無念の文芸社『えほん大賞』✒︎

届いた封筒を家族で楽しむ こんにちは。とうかいりんです。 帰宅したら文芸社さんから3通の封筒が届いていました!そう、この時期はえほん大賞の結果発表! 私、長女、長男で挑んだ第一回。長女はいつ来るか気にしていたようで、帰宅した時には封が開いてい…

『虚ろな刃』ブログ小説NO.13

虚ろな刃 部屋並べられた八つの棺。 処分する方法も見つからず、いつのまにか部屋の大半をそいつらに奪われてしまった。 子どもに関心がないのか、呆れてしまったのか、大荷物を部屋に運び込む俺に両親は目もくれなかった。 仕事も見つからず、ずっと引きこ…

『永遠に続くオレンジ』ブログ小説NO.12

永遠に続くオレンジ あなたは知っているだろうか? 朝と夜のない世界。そういう世界が時空の狭間に存在するということを。 世界地図には載っていない、ほんの小さな島の物語。 昼と夕が混ざり合い、淡いオレンジに染まる幻想的なその島の風景は、見た者の心…

快適な書斎にするために椅子を買う!

短い時間で集中するために こんにちは。とうかいりんです。 最近、夜すぐに眠ってしまうため原因を考えてみました。 そしたら理由は簡単。椅子に長く座っていられず、『一休み→朝を迎える』という単純パターン(笑)。 原因はとりあえず椅子に仮定しました!…

『閃影ギタリスト』ブログ小説NO.11

日が暮れる少し手前。好きなギターの雑誌を読みながら母の帰りを待つ。 いつか手にしてみたい。おもちゃやゲームなんて何もいらない。この雑誌のギタリストみたいに自分の指で弦を弾いてみたい。 赤とんぼが網戸から飛び立つと同時に母が玄関を開ける音がし…

『手のひら 』ブログ小説NO.10

手のひら 少女は生まれつき不思議な力を持っていた。どんな傷でも少女がそこに手を当てると翌日には消えていた。 「ありがとう」 癒えた人々はみんな少女の頭を撫でてそう呟く。それでも少女は笑わなかった。 街角で見つけた瀕死の仔犬に手を当てる。 翼の折…

『りゅー』アーティストコラボ・第9弾 vol.2

フォトグラファーとして活躍する『りゅー』さん 今回のコラボは写真の物語化 こんにちは。とうかいりんです。 日常の風景を美しく切り取る「りゅー」さんとの2回目のコラボ。 二人で20枚くらいのコラボ作品ができたら個展を開催したいなぁという話で盛り…

『凄腕の花火師』ブログ小説NO.9

凄腕の花火師 凄腕の花火師は腕を組み、導火線を見つめる。 ついにこの日が来た。 彼は船の上で独り呟いた。真夏の太陽を反射した湖面が白く光っている。伝説を刻む日にふさわしい天気だと感じた。 真昼間の河川敷に集められた数千人が彼の船を見つめている…

『お湯屋 "天界" 』ブログ小説NO.8

小さな影が水面から沈んでいく。視界の隅で捉えたその違和感は、背筋を凍らすには十分なものだった。 「あなた!!」 砂浜から叫ぶ妻。その表情はランチの準備ができたことを告げるものではない。 息子と娘の3人で楽しんでいたビーチボール。息子のひどいア…

『夜空の箱舟』ブログ小説NO.7

夜空の箱舟 夜空に浮かぶ観覧車は今日も夢を乗せて回る。 その箱型の小さな空間に抱えきれないほどの大きな夢を乗せて。 観覧車は知っている。 乗ってくれるお客さんは前を向いて夢を追いかける人ばかりだと。暗い気持ちでこの箱舟に乗る人はいない。 ある老…

『たった一度の嘘』ブログ小説No.6

たった一度の嘘 人間はいつから嘘という魔法に取り憑かれたのだろう。つきたくない嘘もある。つかなければならない嘘もある。 そんなことは分かっていても、心無い嘘の横行に社会の疲弊は明らかだった。 天界で度重なる協議を行った。社会の秩序を保つために…