読むサラダ〜ある作家の挑戦〜

140字小説家✒︎『Twitter novelist』による新しい文学への挑戦記。文字を使って様々な文学への可能性を追求します。一緒に作品を作りませんか?

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『手のひら 』ブログ小説NO.10

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手のひら

 

少女は生まれつき不思議な力を持っていた。どんな傷でも少女がそこに手を当てると翌日には消えていた。

 

「ありがとう」

癒えた人々はみんな少女の頭を撫でてそう呟く。それでも少女は笑わなかった。


街角で見つけた瀕死の仔犬に手を当てる。

翼の折れた鳥に手を当てる。

 

少女はとにかく目に付いた弱き者に寄り添った。まるでそれが宿命であるかのように、他の遊びには目もくれず手を当て続けた。

 

物心ついた時。

少女はもう何年も部屋から出ない父の傷をようやく理解した。今まで頭や身体、どこに手を当てても治らなかった父の病。

 

布団に包まり震える父の胸にそっと手を当てる。


翌朝。

スーツ姿で出かける父を見て、少女は初めて微笑んだ。

父もそんな少女を数年ぶりに抱き締めた。

 

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