読むサラダ〜ある作家の挑戦〜

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『凄腕の花火師』ブログ小説NO.9

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凄腕の花火師

凄腕の花火師は腕を組み、導火線を見つめる。

 

ついにこの日が来た。

 

彼は船の上で独り呟いた。真夏の太陽を反射した湖面が白く光っている。伝説を刻む日にふさわしい天気だと感じた。


真昼間の河川敷に集められた数千人が彼の船を見つめている。屋台のビールや焼きそばを片手にざわつく観衆。

 

彼は史上初の『昼の花火大会』を開催したのだ。

 

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「今に息を飲ませてやる」


頭に巻いた手拭いが風を受けてたなびく。その動きが止まると同時に花火師は素早い動きで火を放った。

 

打ち上がった花火は昼間の光にかき消され、軌道の痕跡を残さない。

 

次の瞬間。

 

上空で盛大に弾ける花火に観客は呆然とした。真夏の空に牡丹型の闇が広がったのだ。


しばしの沈黙から怒号のように湧き上がる歓声。

 

人々は昼と夜が混ざり合う漆黒の光に酔いしれた。

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