読むサラダ〜ある作家の挑戦〜

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『手を繋ぐ』ブログ小説NO.27

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手を繋ぐ

今日初めて彼女と手を繋いだ。

 

ずっと勇気が出なかった。毎日一緒にいるのにタイミングを失っていた。

 

放課後、珍しく彼女は何も声をかけてこなかった。ハンカチで顔を抑えながら教室からいつもと違う方向に歩く彼女が気になった。

 

「ごめん、俺ちょっと用事思い出した」

「えー、また女のところかよ?今から買い物に行く約束だったよな」

「いや、ちょっと今日は違うんだ。必ずこの埋め合わせはするから!な」

 

人目も気にせず廊下を走った。

 

ここまでが授業後の話。この数分後、ついに彼女と手を繋いだんだ。

 

彼女を見下ろしながら眼をじっと見つめる。

「離してよ」

 

彼女の涙が雫のように落ちていく。俺の額の汗がそれを追いかける。

 

学校の屋上。

 

彼女の背景には下校する学生たちが見えた。

 

「離すもんか。初めて繋いだんだ。君が眠る場所はここじゃない」

 

ずっと教室でひとりぼっちだった彼女。思い起こせば、それが気になって彼女と屋上で友達になったんだった。

数ヶ月前が懐かしい。

 

あの日からずっとそばにいるって決めたのに、今日こんなところで手を離すわけにはいかない。

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