読むサラダ〜ある作家の挑戦〜

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『沈黙』ブログ小説NO.41

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沈黙

「いつも応援してくれてありがとう。みんなと出会えて良かった。また来世で会おうな!それでは聴いてください。僕らの最後の曲『沈黙』」 

 

ドームが歓声で揺れる。

 

ライブの終曲なのに会場を埋め尽くした数千人のファンは帰る気配もない。 

 

「さぁ、もう逝こう。あの大空の彼方へ」

サビ前で地鳴りのような盛り上がりを見せる。そしてファンがグッズで買ったレプリカの拳銃を一斉にこめかみに当てた。

 

この曲の最後のサビでバンドメンバーがする定番の仕草だ。これがどのバンドよりもカッコいい。

 

彼らの歌詞はいつも生と死の狭間で揺れていて、生きにくい現代社会でもがく若者に絶大な支持を得ていた。

 

突然の銃声はファンの歓声の中に消えた。

 

舞台に流れるヴォーカルの鮮血に誰も気づくことはなかった。 

 

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