『コールセンターの一日』ブログ小説NO.32
コールセンターの一日
「大変お待たせいたしました。ご用件をお伺い致します」
鳴り響く電話の嵐。
着信音の合唱は、窓の外の蝉時雨に決して負けていない。
太陽の灼熱と冷房の極寒の狭間で、私は今、処理し終えたばかりの受話器を置いた。
お茶を一口含む暇すらなく、次の電話が生まれたての赤ん坊のように泣きじゃくる。私はグラスをため息と同時にコースターにおいて、受話器をつかむ。
それが私の仕事。
電話受付担当とは言え、一日中、こんなやりとりが続くのは滅入る。
依頼内容の仕分けだけでも凄い量だというのに。
「はい。絵馬に書かれた夢が一万件ですね。何神社ですか?わかりました。絵馬のグレードの順での処理となることをあらかじめご了承ください」
「七夕の短冊の願い事が724件。東京都の立花保育園ですね。子どもの卒園までに叶えられるか?ちょっと弊社の上司に相談してから折り返します」
「はい、もしもし。お賽銭の決算?まだ7月ですよ!そんなの後にしてください」
神の一日は忙しい。